国の貸借対照表について、純資産がマイナスの状態にあるのは
どういうことか。
国の貸借対照表(平成24年度末 財務省HPより)をみると、
国の持つ資産は、国道、堤防といった有形固定資産、独立行政法人への出資金など、計640.2兆円。
一方、国の借金である負債は発行した国債など計1,117.2兆円で、
差し引き477兆円の「債務超過」状態です。
企業であれば、事業を続けるのが厳しい状態と見られますが、
国の場合はすぐにそういう状態になるわけではありません。
政府には、「徴税権」があり、いざとなれば税収を増やして借金を返せる
とみられているからです。
政府の貸借対照表をバランスさせるのが、課税権、徴税権(※)と言えます。
(徴税権とは税を徴収する権利)
これには一定の条件があり、その基準となるのが、債務残高の対GDP比です。
国の支出が増えても、国の経済が成長してGDPが上昇すれば、
将来の税収は増えると考えられるからです。
他国の貸借対照表も、先進国ではほぼ負債のほうが大きくなっていますが、
負債の残高(総債務残高)の対GDP比は、日本は219.1%(2012年)となっており、
主要先進国の中では最悪の水準です。
資産のほうが大きく、この数値がマイナスになるのは中東の産油国など少数国です。
日本の租税負担率(租税負担の国民所得に対する比率)は約24.1%(2014年)で、
35%前後の欧州各国に比べるとまだ低い状態です。
大手証券の試算によれば、日本の租税負担率を約28%まで引き上げると
国のバランスシートはほぼ釣り合うとみられます。
一方で、以下に示す通り、日本は諸外国に投資をしている世界一の債権国でもあります。
国が積極的な投資を行ってきた結果、
貸借対照表を試算してみれば債務超過になるのは自然なことです。
ただ、上記に示した通り、
租税負担率が相対的に低いことや日本が経常収支黒字国で対外純資産が300兆円以上もあること、
国債も95%程度国内の投資家が保有していること、
大幅な財政赤字にもかかわらず国債利回りが1%を切っていることは、
国の経済の安定性、活力を示しています。
財政破たんは、債務残高対名目GDPの比率が増え続けて発散的に拡大することを意味しますが、
プライマリー・バランスを取り戻せばそのような事態は避けられます。
名目金利が上昇し、国債の価格が暴落、利回りが上昇しても、
名目GDPも上昇しますから、すぐに世の中が破たんするわけではありません。
しかし、行政改革や、消費税引き上げなどを行って、
財政改革に真剣に取り組まなければならないことも、現世代の責任でしょう。